| | | | |:--------------------------- |:-------- | --------- | | [[Home\|Koken Arakawa 荒川弘憲]] | [[About]] | [[Diary]] | # Obsidian レイアウトと現場的工夫 > [!NOTE] > この記事は [Obsidian Advent Calendar 2025](https://adventar.org/calendars/11440) 19日目 の記事です。 Obsidian は使用者に合わせて姿を変えるエディターだ。豊富な設定とコミュニティプラグインによって、その使い方はまさに自由自在である。この自由さが、Obsidian を使って「考えること」と「書くこと」の両立を支えている。 今回の記事では、僕の Obsidian のレイアウトを巡りながら、具体的な使い方を紹介する。現場的な細部に宿った工夫を共有したい。 --- ## Part 1: 左サイドバー:素材とツールの搬入口 ![[8-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] 左側のサイドバーは、思考の材料を手に取りやすい場所に配置する「棚」のような役割を果たしている。 ### ブックマーク:コンテキストを可視化する ![[1-Obsidian レイアウトと現場的工夫.gif]] プロジェクトのノートや、Excalidrawで表現したカレンダーとBasesでまとめたタスクといったスケジュールを管理するノートも、アクセスしやすいようにこのブックマークに配置している。 その他に継続的に取り組むノートもブックマークに入れている。たとえば勉強のノート、事務のノートもブックマークの一番上に固めているのだが、これが気に入っているのだ。これはPKM(Personal Knowledge Management)における強力な分類法である Tiago Forte さんが提唱する PARA メソッドを検討するなかで、継続的に取り組むノート(PARA の "Area")の扱いに工夫を加えたものだ。Area は「国語のノート」のような、科目ごとのノートに似ている。一つのテーマに関心を持ち続けるのなら、フォルダに分けるのではなく、そのノート自体に文章を蓄積していけばいいと考えたのだ。 一般的な PARA メソッドでは Area ごとの「フォルダ」を作成し、そこに関連ノートを格納していくのが通例だ。しかしこの手法では、一つのノートがフォルダのような役割**を果たしている。 もちろん、そのままでは文章が長くなりすぎてしまう。そこで「現在の選択範囲を抽出(Extract current selection)」機能を使い、作成したノートへのリンク(ログ)が時系列順に並ぶようにしている。基本的には一週間単位で区切りを設け、その Area に関わる記録を残していく。タイトルを見るだけでコンテキストが伝わるようにしている。 ![[10-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] ![[7-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] その他にブックマークには現在注力しているプロジェクトやタスクの管理ベース(Bases)、スケジュールチェック用のノートもここに集約している。 ### フォルダ管理:階層に頼らないフラットな運用 フォルダによる厳密な管理は行わず、以下のようにシンプルに分類している。 - **Assets**: Excalidraw の Image Library など、素材の格納庫。 - 参考:[Build a Searchable Icon Library in Obsidian With Bases · GitHub](https://gist.github.com/zsviczian/2fd27e4431852d1ee8eabf08d6cdcd17) - **Categories**:「Bases」運用の基盤となるカテゴリー。Kepano 氏が公開しているデモ Vault から自分も使いそうなものをそのまま移設した。 - [GitHub - kepano/kepano-obsidian](https://github.com/kepano/kepano-obsidian) - **Clippings**: Obsidian Web Clipper で収集した記事の集約先。 - **Daily**: デイリー、ウィークリー、クォーター、イヤリーノートなどの時系列ログ。 - **Extra**: 画像や PDF ファイルなど。 - **Inbox**: ほとんどの新規ノートは一旦ここへ。 - **Others**: Excalidraw のスクリプト、孤児ノート(Orphans)、リンク切れ、空のノートなど。 - **Templates**: テンプレートファイル。Linter でプロパティが自動挿入される対象から除外している。 - **References**: 人、プロダクト、場所、アプリなどの固有名詞。 - **工夫ポイント**: カテゴリ分けをする際、コミュニティプラグインの「Templater」 を使うことで、自動的にこの References フォルダへ移動されるように設定している。これは **Kepano** 氏の「自分の思考に関わるノート(Inbox)と、その外側の情報(References)を分ける」という考え方を取り入れたものだ。(Templater の JavaScript の設定例:コマンドパレットからテンプレートを走らせると、自動で References フォルダに移してくれる) ``` ``` ### Auto reveal current file:迷子にならない工夫 ![[2-Obsidian レイアウトと現場的工夫.gif]] 「Auto reveal current file」は現在開いているノートがフォルダツリーのどこにあるのかを示してくれる機能だ。ボタンを押してもいいのだが、より気楽に発動させるために、うるおいらんどさんの以下のスクリプトを活用し、ホットキーを割り当てている。 - [Obsidian で現在開いているファイル位置までスクロールするスクリプト](https://uruly.xyz/notes/Obsidian%20%E3%81%A7%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E9%96%8B%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB%E4%BD%8D%E7%BD%AE%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%97%E3%83%88) 私はこれを `Cmd + Shift + J` に割り当て、一発でファイルエクスプローラー上の位置を表示できるようにしている。 ### ドラッグロック:メモを「物」みたいに操作する ![[1-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] (これは Mac のトラックパッド限定かもしれないが)検索結果やエクスプローラーからドラッグ&ドロップでノートを持ってくる際、アクセシビリティ設定で「ドラッグロック」を有効にしている。 「トントン(2 回触れる)→そのままズラス」で掴んだままにし、配置したい場所でタップして離す。この指先の操作感が、思考を止めずに作業する上で地味ながら重要なのだ。 --- ## Part 2: メインペイン:思考の加工・組立ライン ![[6-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] ### Commander でタブバーを司令塔にする ![[3-Obsidian レイアウトと現場的工夫.gif]] 「Commander」プラグインを使い、タブバーによく使うアクションを配置している。 - **デイリーノート操作**: 今日 / 前日 / 翌日 のノートをワンクリックで開く。 - **Excalidraw**: "Create new drawing in a new tab" - Excalidraw ファイルを作成すれば、自動的に裏面の Markdown ノートも生成される。Markdown から Excalidraw を作るよりも、この手順の方がプロパティ設定の手間が省けると気づいた。 - **ランダムノート**: 過去のノートと偶然再会する機能。 - パラパラと見返しながら、Outgoing Link(発リンク)をポチポチと繋いでいく作業に使う。 - リンクを繋いでいく意義については、asadaame さんの以下の記事が参考になった。 - [ObsidianでWeb記事を読む](https://asadaame5121.net/Article/Obsidian%E3%81%A7Web%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80.html) - この実践例では、リンクを辿って読む行為の流れとその効用が丁寧に描かれている。 ### 「右に分割」でノートを電子カルテ化する ![[4-Obsidian レイアウトと現場的工夫.gif]] コマンドパレットの「右に分割(Split right)」にはホットキー `Cmd + R` を割り当てている。これでペインを縦に分割するのが「電子カルテ化」だ。 僕が通っている耳鼻科の電子カルテを覗き込んだとき、患者情報、診断履歴、レントゲン写真、そして今回の診察メモが並列に表示されているのを見た。これをヒントに、一つのノートに多くの情報を入れることを躊躇わなくなった。 例えば執筆時なら、「募集要項」「参考メモ」「ドラフト」「実際の執筆場所」を 1 つの画面内に分割表示する。多様な情報を参照しながら「今日の診察(執筆)」に臨むのだ。こうすることで、情報量が多くても一覧性を保ち、利便性を追求できる。 ### リンクされたメンション:デイリーノートと接続すると楽しい ノートを作りすぎないためには、Obsidian の捕獲能力を踏まえることが重要だ。 例えば、会議というほどでもない個人との雑談メモは、デイリーノートにその人の名前(リンク)を埋め込んでメモしておくだけにする。そうすれば、その人のノートの「リンクされたメンション」を見るだけで、自然と交友録が出来上がる。 同様に「洗車」や「風邪」なども、デイリーノート内でダブルブラケット [[ ]] で囲んで書いておく。すると、過去の洗車や風邪の履歴を簡単に辿っていくことができる。 ### Linter また、コミュニティプラグインの **Linter** を使い、必要なプロパティ(YAML Frontmatter)を自動挿入している。 YAML ``` aliases: categories: description: tags: tasks: false type: ``` プロパティの`tasks` はチェックを入れると、自動で Tasks プラグイン等のベースに入るように運用している。 特に `description` は重要だ。ここをしっかり書いておくと、Bases でリスト化した際に、ノートを開かなくても内容が把握できる。「未来の自分が検索するとき、どんな言葉で探すか?」を想像して `description` に含めておけば、簡易的な検索フィルターを作る際にも役立つ。 例:Bases のフィルター計算式(Formula) (file.name + author + description + tags).contains(" 芸術理論入門 ") これは、Minerva さんの以下の記事の考え方をBasesにも応用したものと言えるだろう。 - [Obsidian Find Info 10000 Files](https://minerva.mamansoft.net/2025-01-19-obsidian-find-info-10000-files) ### 文章の移動:シャッフルのように ![[5-Obsidian レイアウトと現場的工夫.gif]] - **上下に移動**: ⌘+↑↓で、カーソル行や選択範囲を上下に移動できる。 - **アウトライン移動**: ノートのアウトライン上でもセクションごと移動可能だ。 これらを駆使して、文章をシャッフルするように構成を練り上げていく。 ### Vertical Tabs でノートを俯瞰する ![[6-Obsidian レイアウトと現場的工夫.gif]] メインペインではコミュニティプラグインの Vertical Tabs を活用し、ノートをタイル表示にしている。複数のノートを並べて全体を俯瞰しながら、そのまま書き込みができるのが利点だ。 先ほどの「Auto reveal current file」で現在カーソルがあるノートを表示させ、そこからドラッグ & ドロップで別のノートへ情報を移植する。右サイドバーのバックリンク、アウトゴーイングリンクからもドラッグ&ドロップで移植する。キーボードで文字を打ち込まずとも、トラックパッドを操っているだけでノートを集約していける。 ### Workspaces Plus ここからワークスペースにアクセスできるのが便利だ。コミュニティプラグインの Workspaces Plus を使用している。 --- ## Part 3: 右サイドバー:コンテキストと接続の表示 ![[9-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] ### カレンダーとタスク管理 コミュニティプラグイン「Daily notes calendar」は、その日に作ったノートを可視化してくれる。 タスク管理にはウィークリーノートを活用しており、ここは Kepano さんの手法を取り入れている。(参考:[How I do my to-dos — Steph Ango](https://stephango.com/todos)) `Option + S` で Raycast のスニペットを呼び出し、一週間分のタスクリストの雛形を展開する。 Markdown ``` 月 - [ ]  火 - [ ]  水 - [ ]  木 - [ ]  金 - [ ]  土 - [ ]  日 - [ ] ``` ここに、ブックマークしているタスク表や、Excalidraw の年間カレンダーを見ながら、パズルのように一週間の予定を組み立てていく。 ### Image Library:視覚素材のライブラリ Excalidraw で使用するイラスト素材は、ここからドラッグ&ドロップで利用できる。 Obsidian 上での「[[Image Library]]」構築にあたっては、Excalidraw の開発者である [[Zsolt Viczilan]] 氏の手法を参考にした。 - 参考:[Build a Searchable Icon Library in Obsidian With Bases · GitHub](https://gist.github.com/zsviczian/2fd27e4431852d1ee8eabf08d6cdcd17) - 動画:[▶️ Watch the full setup guide on YouTube](https://youtu.be/uCorEGjLtns) ### Footnotes:時を跨いだ対話 ![[5-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] 脚注(Footnotes)機能は、単なる補足以上の役割を持つ。コーネルノートのようにも使えるが、それだけではない可能性を感じているのが「時を跨いだ対話」だ。 過去のログに対して、原文を書き換えたくはないけれどツッコミを入れたい時や、見返して新しいリンクを繋げたい時に、日付入りで脚注を追記する。こうすることで、リニア(直線的)な時間の記録の中に、相互参照的な対話が生まれる。まるで、過去の自分と対話しながら思考を深めていく感覚だ。 ### Related / Backlinks / Outgoing Links:KJ 法的な結合 ![[7-Obsidian レイアウトと現場的工夫.gif]] 右下には関連ノートを表示させている。これは Nick Milo さんが提唱する「Link Your Thinking」の哲学や、Kepano さんの Bases 活用例、そして Jazz と読書の日々さんに影響を受けたものだ。 - [kepano-obsidian/Templates/Bases/Related.base](https://github.com/kepano/kepano-obsidian/blob/main/Templates/Bases/Related.base) - [Obsidian Basesで関連ノートを表示する方法 - Jazzと読書の日々](https://wineroses.hatenablog.com/entry/2025/09/11/124715) ここでは、例えば `[[差異]]` という単語のバックリンクが羅列されることで、擬似的な **KJ 法** を行う土台が養われている。いつの間にかネタ集めができている、そんな状態も夢物語ではない。 心理学者のウィリアム・ジェイムズ(1842-1910)は、こう語っている。 >「忘れるな。規則正しい生活習慣がついて初めて、人は真に興味深い活動分野に進むことができ、その結果、意図的な選択をひとつひとつ、まるで守銭奴のように蓄積していける──ひとつの輪が抜けると、無数の輪がはずれてしまうことを、決して忘れるな」 ある選択を強く意図していなくても、後からその選択を意図するようになれば、これまでのノートから蓄積を発掘できるのが Obsidian のいいところだ。 Excalidraw で情報を空間配置する際も、ホバービューで言葉の定義を確認し、関連ノートを一覧化し、そこからドラッグ&ドロップで配置する。この一連の流れにおいて、冒頭で触れた「ドラッグロック」の設定が効いてくる。 ![[4-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] --- ## おわりに:道を作る楽しさ ![[2-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] ホバーエディターでサッと開き、思ったことを書き、関連ノートを繋げる。ノートの見つけ方や繋げ方にも多様なアプローチがありえてしまうのが Obisidan だ。使い手のその時々のモードによって、Obsidian の前に展開される状況が変化していく。 右サイドバーで、リンクされた理由やディスクリプションを確認することで、未来の自分の思考が同じ場所をまた歩き、前回よりも遠いところへ行きやすくなる。すぐに役立つことを求めすぎず、しかし「いつか役立つかもしれない」という予感を信じて続けていく。 ![[3-Obsidian レイアウトと現場的工夫.png]] Obsidian CEO の Kepano さんもリンクをふんだんに使うことを推奨し、「カオスを受け入れよう」と言っているが、こうした偶然の小道の発見こそが楽しい。 これまでは「制作場所」に例えて紹介してきたが、実際にメインペインで生産的に何かを生み出し続けているかというと、そうでもなかったりする。しかし、「あそこにはあの情報があったな」「ありそうだな」という感覚(Sense of Place)を獲得するために動いていること自体が、私の神経系にとっての報酬になっている気がするのだ。